「進路どうしよう…」と将来に不安を感じている中学生は非常に多いです。
進路を決める上で一番最初に考えるのは、普通科(進学系)にするのか、工業高校などを含めた専門学科にするかですよね。
普通科は『大学受験を目的に幅広く勉強するための学校』ということは想像できるでしょう。
しかし、専門系の学校となるとイメージができずに困ってしまう方は多いのではないでしょうか。
僕は2020年3月に工業高校を卒業しましたが、進路に悩んでいた中学生当時は工業高校のイメージが全くわきませんでした。
そこで今回は、工業高校出身の僕が、工業高校とはどのような学校なのかを分かりやすく紹介します。
- 工業高校はどんな学校なの?
- 工業高校に行くメリットやデメリットは?
- 工業高校の卒業後はどのような選択肢があるの?
- 工業高校がおすすめな人・不向きな人は?
上記について気になっている中学生の方、あるいは保護者の方はぜひ参考にしてください!
工業高校とは?普通科との違いを紹介
結論を言うと、工業高校とは工業に関する専門知識と技能を学習できる学校です。
一般的に、普通科高校では大学進学を目的に指導しています。それに対し、工業高校では会社に即戦力として採用されるような人材を育成・指導しています。
普通科高校では決して得られないモノづくりに関する専門知識と経験が積めるので、専門知識が必要とされる会社に就職しやすいです。
実は、工業高校といっても学校によってかなり差があり、選択できる学科の内容や種類が異なります。
たとえば工業高校Aには「自動車科」があっても、工業高校Bには「自動車科」がないというケースも珍しくありません。
さらに学校によっては同じ系統・同じような内容の学科でも「機械科」や「機械工学科」など学科名が違うこともあるのです。
上記のような学校ごとの違いや特色まで説明してくれる先生はそれほど多くはないでしょう。
まずは工業高校の特徴について、普通科高校とは大きく異なる点を紹介します。
工業高校の進路先は就職する人が約7〜9割を占める
工業高校の進路先としては、就職する人が約7〜9割を占めています。
この割合は普通科高校では、まずあり得ないと思います。
それは当然で、工業高校は専門知識を身につけて就職するための学校だからです。
残りの進路先として大学への進学がありますが、工業系学部のある大学、工業系の専門学校に進学する人がほとんどです。
さらに工業高校の先生は、数多くの生徒を就職に導いているので就職試験に関するノウハウも豊富です。
例えば自分がいた学校では面接対策の指導が凄くて、就職試験を受けた人のほとんどが「満足できる面接ができた」と答えるほどのクオリティになっていました。
このような要素も就職率が高いことに関係していると思います。
工業高校の授業内容は「実技」が多い
会社の即戦力になるには知識だけでなく『実際にできる』ことが重要です。
つまり実技が必要なので、工業高校では実際に物を作ったりする「実技授業」が非常に多く設定されています。
学校によって多少の差はあると思いますが、実習は週に1回〜3回程度あります。(学年が上がるにつれて、増える場合もある)
そして、実習の授業は1回で3時間〜4時間分あるので、1日の大半を実習していることもあります。
そのため、工業に関する実際の作業経験が豊富になり、工業系の資格も取得しやすい環境です。
ちなみに、僕がオープンスクールで工業高校に行ったときは、第一印象が「学校じゃなくて工場やん」でした。
これについては、工業高校に行ったことがある人なら共感できる点だと思います。
工業高校は第一印象が工場だと思うレベルで、専門知識・技能を身につけるための環境が整っていますよ
工業高校にある主な学科の種類
先述したように、工業高校と言っても学校によって学科の種類、内容は異なる場合があります。
そのため多少の違いはある可能性がありますが、一般的な工業高校にある主な学科について解説します。
- 機械系
- 電気系
- 建築系
- 土木系
- 化学系
工業高校では、上記のような学科が一般的です。
ちなみに僕が通っていた工業高校では、機械科・電気科・建築科・土木科・化学工学科の計5つの学科がありました。
それでは各学科の学習内容や就職先などを簡単に紹介します。
機械系の学科(機械科)
機械系の学科では、基本的に工作機械を使ってモノづくりをするのがメインになります。
中学校の技術の授業で、何か作ったりしませんでしたか?機械科は、中学校の技術をパワーアップさせた感じです。
具体的には以下のような学習をします。
- 板金・手仕上げ
- 溶接・鋳造(ちゅうぞう)
- 機械製図(構造やサイズを示した図)
- 機械の設計
- 旋盤(せんばん)
- プログラミング・CAD
難しい単語もありますが機械科では、主に設計や製図を書いたり、工作機械を使ってモノづくりをします。
旋盤(せんばん)などの特別な工作機械を使用して、金属を削ったりするので、一般人では絶対にできないような経験を積むことができます。
就職先は、鉄道会社・大手自動車会社をはじめとする工場などの製造業全般がメインです。
電気系の学科(電気科)
電気系の学科(電気科)では以下のようなことについて学習します。
- コードの配線
- 電気基礎
- 電子制御
- 情報技術
- 製図・CAD
- プログラミング
上記などを学ぶことができます。
電気に関する基礎知識やコンピューター、プログラミングなどを勉強します。
プログラミング言語が違うので比較はできませんが、プログラミングは機械科よりも電気科の方がメインです。
電気科で取得できる有名な資格で、電気工事士というものがあります。
この資格を取得すると、家庭などのコンセントの奥側(壁の中の配線など)をいじることができたりします。
そして電気科からの就職は、電力会社や鉄道会社、自動車会社などの他に、エアコンやエレベーターなどのメンテナンス関連の会社が多いです。
建築系の学科(建築科)
建築科は言葉からイメージしやすいと思いますが、家などの建築に関する内容を学習します。
- 木材の切り方や機械の扱い
- 大工道具の使い方
- 建物などの設計
- 製図
上記のような家を建てるプロセス全てを勉強します。
建築科では、製図や設計、デザイナースキルがあると非常に強い人材になれます。
就職先としては大手ゼネコン、建築事務所、ビルの管理会社、大工などがあります。
ゼネコンとは創業建設業者のことで、簡単い言うと、建設工事の工程すべてを引き受けることができる会社です。
土木系の学科(土木科)
土木科では、橋やトンネル、ダムや道路、上下水道、空港などの生活に無くてはならないものを建設するのに必要な知識・技能を身につけます。
具体的には以下のようなものです。
- 測量
- 設計
- 施工
- コンクリートなどの材料実験
- 地質調査
- 製図
上記などを勉強します。
土木科は、土木施工管理技術検定や測量士補などの専門資格を取得することができます。
就職先としては、建設会社・ゼネコン・道路会社・鉄道会社などがあり、会社によっては建築科ともかぶることもあります。
化学系の学科(化学工学科)
化学系の学科では、中学で勉強した元素や化学変化をさらに勉強していきます。
- 化学の基礎・基本
- 実験器具・薬品の取り扱い
- 材料の合成
- 成分の分析
- 化学工学
化学科では、いわゆる研究者のような人がやることを勉強します。
さまざまな合成によって、新たな素材を生み出すようなことも勉強できるようです。
就職先としては、ゴム・金属・プラスチックなどの製造工場、化粧品工場、研究所・研究室などがあります。
また、化学科では危険物取り扱いの資格も取得したりするので、実はガソリン会社(ガソリンスタンド)などへの就職も強いです。
工業高校に行くメリット
次は工業高校のメリットについて解説します。
具体的には以下のようなメリットがあります。
- 工業系の就職は強い
- 専門的な資格を取得できる
- 同じ目標、興味、趣味の人が集まりやすい
- 工業高校でも大学進学は可能(多くの場合は私立)
それぞれ詳しく解説していきます。
工業系の会社への就職はとても有利(強い)
先程も説明しましたが工業高校では専門的な知識・技能を身につけることが出来ます。
そのため、工業系の知識・資格が必要な仕事や職場であれば即戦力として採用されます。
また、意外と知られていませんが工業高校から大手企業に就職することも全然可能です。
僕がいた学校は、機械科と電気科から某大手自動車会社などへの就職が毎年できていました。
さらに、工業高校として有名な学校なら下手に大学に行くよりも、工業高校から就職した方が有利になる場合もあります。
工業系の会社に就職希望なら、工業高校の環境は非常に力強いですよ。
工業の専門資格を取得できる
漢検や数検、英検やTOEICなどの一般的な資格の他に、工業の専門的な資格取得ができます。
特に、工業系の専門資格は「実務経験2年以上」というような実際の作業経験が必要な資格が多いです。
この「実務経験」の受験資格は、工業高校生は免除されるので取得することができます。
普通科や一般の大学生が取得したくても、そもそも受験できないような資格を取得できます。
僕は機械科だったので、機械系の資格では「普通旋盤2級」や「機械製図2級」などを取得しました。
ちなみに工業系の資格では、工業高校生が取得できるのは2級までです。
同じ目標や趣味を持っている方が集まりやすい
工業高校は普通科と違い、専門学科なので必然的に入学する人も同じような目標を持っていることが多いです。
そのため友達が作りやすい、クラス内で仲良くなりやすいという特徴があります。
楽しい高校生活を送るためにも、これは結構大事なことです!
特に工業高校は就職が多いので、工業高校でできた友達が一生の関係になることもあります。
さらに、同じ目標を持ったライバルという存在もできて、刺激をもらえるかもしれません。
工業高校でも大学進学は可能(多くの場合は私立)
僕もそうでしたが、工業高校=就職しなければいけないと思っていませんか?
そんなことは全くなくて、工業高校でも大学へ進学をすることは全然可能です。
特に国公立などの難関大学は厳しいかもしれませんが、私立大学であれば普通に進学できることが多いです。
さらに言うと、僕みたいに起業して個人で活動していくという選択肢もあります(笑)
僕は高校3年の頃、進路に迷った結果、昔から憧れていた経営者や起業家になる選択をしました。
そして高校3年の10月に、お金はないですが起業して事業設立をしました。
僕のような方は超少数派だと思いますが、こういう選択肢もあることを覚えておきましょう!
工業高校のデメリット
工業高校のデメリットは以下のようなものがあります。
- 国公立の大学受験は厳しい(本人の努力次第)
- 大学進学できても勉強がついていけない可能性(本人の努力次第)
- 就職希望の会社がそもそも高卒募集をしていない可能性
- 就職先で大卒の人からバカにされる可能性
- 学科によっては女子が超少ない場合もある
それぞれ深掘りしていきます。
国公立の大学受験は厳しい(本人の努力次第)
工業高校から国公立などの大学受験はかなり厳しいです。
工業高校は、会社に即戦力として採用されるような人材を育成する学校です。
それに対して、国公立などの受験生はみんな大学受験を目標にして勉強してきた人達です。
そんな人達と競い合って、合格を勝ち取るのは決して簡単ではありません。
もちろん、工業高校から難関の国公立大学へ進学する人もいますが本当にわずかです。
僕がいた学校でも、年に2〜5人程度は国公立大学に受験していて、2人〜3人程度は合格していました。
ちなみに、工業高校からの大学受験は一般入試よりも「推薦入試」で行く場合が多いです。
「東大に行きたい」や「早稲田に進学したい」と考えている方は、工業高校からは難しいのが現実です。
大学進学できても勉強についていけない可能性あり
これは意外とある問題ですが、希望していた大学に無事進学できても勉強についていけない可能性があります。
もし大学に合格することをゴールにしていたら、痛い目にあいます。
よく言われることですが、合格して入学してからが本当のスタートです。
当然ながら、大学でも必死に勉強を続ける必要があります。
就職希望の会社が高卒を募集していない場合がある
これは結構、大きなデメリットなのでしっかり考えておきましょう。
会社は求人募集をして、人材を確保します。その求人内容には応募資格として「大卒以上」というのが記載されている場合があります。
高卒の方は「大卒以上」などが記載されている求人募集に応募できません。つまり、高卒を募集していない会社には基本的に採用されず、就職ができません。
工業系の会社ならある程度は大丈夫ですが、学歴を求めるような職は厳しいのが現実です。
僕は高校在学中に「プログラミング関係の仕事に就きたい」と一時期考えていました。
そこで自分の学校に送られてくる会社からの求人広告を確認するのですが、プログラミング系の仕事は少なめでした。
そのため僕は、自分が行きたいようなプログラミング系の会社を調べて、自分から会社に営業(?)のような連絡をしていました。
求人広告がきていない会社、高卒は基本的に募集していない会社にどうしても行きたい場合は、自分から動く必要があります。
就職先で大卒の人から馬鹿にされる可能性がある
これは書くか迷いましたが実際、社会に出てみるとあったので念の為に入れました。
もしかしたら就職先で、最終学歴マウントをとってくる人がいるかもしれません。
そんな人がいても気にせず、関わる人はしっかり選んでいましょう。
とにかく社会には、未だに昔ながらの考え方をしている方が多いので覚えておきましょう。
学科によっては女子が超少ない場合もある
工業高校は、学校の地域や学科によっては女子の比率がかなり少ないです。
工業系に進学する女子が、普通科に比べて圧倒的に少ないからです。
僕がいた機械科は、1学年2クラス(定員80人)あるのに自分の代の女子は、わずか2人でした(笑)
ちなみに僕のクラスは女子0人で、ほぼ男子校状態でした。
学科によって差が大きく、おそらくどこの工業高校でも建築科は女子に人気です。
もし工業高校を希望しているなら、その学校の男女比率について調べておくと良いかもしれません。
「青春を送りたい」という願望がある人には、なかなか厳しい現実が待っている可能性もあります(泣)
工業高校におすすめできる人、おすすめできない人
次は工業高校への進学がおすすめできる人、おすすめできない人について解説します。
もちろん、この通りにした方が良いという訳ではないので、あくまでも参考程度にしてもらえたらと思います。
工業高校に進学するのが"おすすめできる人"
工業高校への進学がおすすめできるのは以下のような人です。
- 工業系の会社に就職したい
- モノづくりが好き・興味がある
- 専門資格を取得したい
- とにかく就職に強い学校に行きたい
明確な夢や目標がある人で、工業系の会社に就職したい方は工業高校が最適です。
また、プラモデルや工作などのモノづくりが好きな人にもおすすめします。
人によっては「家が近いから工業高校にする」という決め方をしている場合もあるかもしれません。
個人的には、それも一つの選択なので良いのかなと思います。(自分は通学時間が片道1時間半だったので苦労しました)
家から近い学校は、遊ぶ時間も勉強する時間も作りやすいです。
そのため、学校を決める上で『通学時間』は大きな要素でもあります。
工業高校に進学するのが"おすすめできない人"
逆に工業高校への進学がおすすめできないのは以下のような人です。
- 大学へ進学するつもりがある
- 「大卒」の最終学歴(資格)が欲しい
- 夢や目標が特にない・わからない
上記のような方は、工業高校はおすすめできません。
特に大学へ進学する予定があるなら、普通科の方が圧倒的におすすめです。
ただし、工業系の大学(学部)や専門学校に行くのであれば、工業高校の方がおすすめです。
もし将来の夢や目標がない、分からないという方は、普通科へ進学することをおすすめします。
その方が、高校卒業後の選択肢が広いので目標を決めるのが遅くなっても修正しやすいです。
工業高校に関するよくある質問
以下に、工業高校に関するよくある質問をまとめました。
工業高校と普通科高校の違いは何ですか?
主な違いは、授業内容と進路先です。一般的な工業高校では、工業系の実技授業が多く設定されているため、専門的な知識や技術を身に着けることができます。卒業後の進路先は、基本的に就職を選択する人が多いです。現時点で大学進学を考えている、もしくは明確な夢が決まっていない場合は普通科高校がおすすめです。
工業高校のメリットは何ですか?
工業高校のメリットは、専門的な資格を取得できて工業系の就職に強いことです。工業高校の在学生は、本来であれば職場で実務経験を積まなければ受験資格を得ることができない資格でも受験・取得できます。専門的な資格を取得することで就職も有利になるでしょう。
工業高校のデメリットは何ですか?
工業高校の主なデメリットは、普通科高校に比べて大学進学が難しいことです。工業系の授業がメインで設定されているため、数学や物理(理科)、英語といった主要科目の学習ペースは遅いのです。本人の努力次第ではありますが、工業高校からの大学進学(特に国公立)は、どうしても普通科高校に比べて難しいことを理解しておきましょう。
進路選択で後悔しないために、中学生に伝えたいこと
高校は公立・私立を選ぶだけでなく、普通科や専門学科なども決める必要があるので、大変ですよね。
特に、多くの人は高校が初めての進路選択になると思うので、なおさら不安で一杯だと思います。
そこで、絶対に覚えておいてほしいことは”自分で決断する”ことです。
誰かが〇〇するから自分もそうする・・・ 親が〇〇と言うからそうする・・・ 友達が行くから、自分も同じ学校に行こうかな・・・
こういう考え方は絶対にダメです。
高校は義務教育ではありませんし、お金もかかります。自分の人生は、自分で決めていきましょう。
ちなみに、中学校では活発だった人が高校で不登校になり、最終的に退学するという事も少なからずあります。
実際、僕がいたクラス(3年間同じクラスメート)では途中で2人退学しました。
(問題を起こして退学処分になった訳ではありません)
高校には“いままでとは違う一面”があることをしっかりと把握しておきましょう。
今回は工業高校について紹介しましたが、少しでも理解してもらえたら幸いです。
進路選択というのは、一人ひとり異なる目標や夢に向かって道を選択するものです。
少しでも進路選択の参考にしていただけたら幸いです。